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世の中、経験してみないと
わからないことだらけですね。

食いしんぼNo.002

牛骨(ヴィールボーン)のローストから始めるフォンドボーとビーフシチュー

ある日テレビで見た光景。

昔、たまたま辻調の外国人講師さんがテレビでフォン・ド・ヴォーを作っているところを見かけました。この作業を食い入るように見ていたわけではありませんが、ちょっと興味があったので最後まで見てみました。

確かに時間はかかる。でも特別な器具や具材はマルミット(寸胴)や子牛の骨以外特別なものを使っていなかったし、高度な技術を要することもしていない。やってやれないことはないのでは、と思いました。

やってやれないことはない・・・・その通りで、フォン・ド・ヴォーは家庭で作れます。子牛の骨はネットでも手が入るし、寸胴も安く買えるようになりました。

出来上がったフォン・ド・ヴォーは何にすれば良いの、といえばドミグラスソースにしてビーフシチューが作れます。

ブラウンソースをフォン・ド・ヴォーで伸ばし、ビーフを煮てマデラワインと塩こしょうで味付けすればビーフシチューの完成です。

なんて簡単にいいましたけど、ビーフシチューは市販のドミグラスソースを使っても時間がかかる料理です。固いスネ肉などを煮込んで作るのが一般的ですからね。

さらにフォン・ド・ヴォーから作るとなると早くても丸1日使いますし、さらにドミグラスソースを作るのに半日、ビーフシチューにするのにもう半日と少なくとも丸2日かかる作業です。

でも頑張って作れば、市販品のビーフシチューなんて問題にならないくらいのおいしいビーフシチューが完成しますよ。

フォン・ド・ヴォー?ミルポア?ドミグラスソース?ブイヨン???

実のところ私も偉そうに講釈たれることが出来る訳ではありません。

フォン・ド・ヴォーだのミルポアだのブラウンソースだのドミグラスソースだの何が違うのかと。

フォン・ド・ヴォーという言葉を一般的にしたのはS&Bのディナーカレーだと思います。一方でミルポアはゴールデンカレーに出てきます。よく意味がわかならないまま使っていました。がフォン・ド・ヴォーを作るにあたって多少理解が進みました。

フォン・ド・ヴォーを付くに当たって辻調の「基礎からわかるフランス料理」とル・コルドン・ブルーのフランス料理基礎ノートを参考にしましたがこれに詳しく書いてあるわけでもないのですが、フォン・ド・ヴォーのフォンはフランス語で「だし汁」を意味するそうです。

これらの本にはいろいろなフォンの作り方が出ていました。透明なフォン、白いのフォン、褐色のフォン・・・。

このうち褐色のフォン、というのはだしを取る素材に焼き色を付けてその素材と焦げ身をだしにする技法で作るだし汁で、フォン・ド・ヴォーもこの褐色のフォンの一種。フォン・ド・ヴォーのヴォーは子牛を意味し、子牛の骨をローストして使うのでこの名になっているようです。

フォン・ド・ヴォーの材料は子牛の骨にすじ肉、少しのハーブとにんにく、それにトマトとタマネギ・にんじん・セロリ。タマネギ・にんじん・セロリでフランス料理によく使われる香味野菜で、これを刻んでスープを取ったものがミルポアだそうです。

ちなみに香味野菜と牛肉を煮込んで出来た牛肉はポトフとなり、濾されたスープはブイヨンになるとのことです(ミルポア+牛肉)。

香味野菜と牛肉ほどよく焼いて焼いた子牛の骨を加えればフォン・ド・ヴォーです。ややこしい?

ブラウンソースは小麦粉をバターで焼いて作ったルーのことで市販品はいろいろな出汁や調味料を加えています。フォン・ド・ヴォーを使えばドミグラスソースです。

ところでドミグラスソースは現代フランス料理では使われていないようです。

フォン・ド・ヴォーを作る

うんちくはこの辺りにして、作業に入ります。先述の通り辻調の「基礎からわかるフランス料理」とル・コルドン・ブルーのフランス料理基礎ノートを参考にしています。

用意したのは子牛の骨2キロ、すじ肉1キロ、タマネギ3個、トマト2個、セロリ2本。それににんにく3片とハーブを束ねたブーケ・ガルニ(タイム、ローリエ、セロリの茎、ローズマリー等)。

まず、子牛の骨を焼きます。これをしないと始まりません。
オーブンでローストしますが、家庭用オーブンでは一度では出来ません。2度に分けてローストします。
温度はどちらのレシピでも220度超となっていますが、焦がせば失敗確定ですから200度で様子を見ながら焼いています。焼き具合を見ながら向きも変え、1時間くらいで焼き上がりました。ちなみに骨髄から水分が出てくる頃合いを狙っています。

重要なのは鉄板についたお焦げす。本当に焦げていたら使いものになりませんが、これは旨みを凝縮しているもの(と言われている)ので、絶対に捨てずにお湯と木べらでこそぎ落としましょう。

すじ肉と香味野菜は同時進行でローストしますので、フライパンを使います。

どちらも香ばしい匂いがするまで焼き。骨同様お焦げはお湯と木べらでこそぎ落とします。
すじ肉は焼き色を付けた後一度茹でこぼしています。

焼き終わったら焼いた材料をすべて寸胴に入れてお湯を投入。
輪切りにしたトマト1個、にんにくとブーケ・ガルニを加えて煮込みます。

最初は強火で。沸騰したら優しい火加減にし、沸騰しない温度に保ちながら煮込みます。一般的に出汁が一番出やすいのは80度~90度と言われていますのでこの辺りの温度をキープします。

ところでこの寸胴は24cmのもので容量11リットル。お湯はこの高さまで来ます。
「鍋でも出来る」と書きましたが、基本的に大きな鍋が2つないと厳しいと思います。また、鍋は厚手なものでないと難しいでしょう。それと、鍋2つだと寸胴に比べて蒸発が早いので注意が必要です。

火に掛けている間、頃合いを見て灰汁をすくい取ります。
灰汁はどこまで掬えばいいのか?コンソメのように澄んだだし汁が欲しければとり続ける必要があるかも知れません。

ただし、これは褐色のフォンで最終的にビーフシチューになりますからそこまでする必要も無いと思います。灰汁と一緒にゼラチンも掬ってしまいますし。雑味も味の一つと割り切って、頃合いを見て掬う程度で構わないと個人的には思っています。

↓この写真は火に掛けて4時間くらいたったもの。水はだいぶ減り、野菜はだいぶ小型化しました。木べらの上に乗っているのは骨で、スジが一部残っていますが他は骨から外れています。すじ肉は赤身以外残っていません。

再びお湯を加えて、さらに煮込むこと5時間。

骨は骨だけに。ほかのすじ肉はすでに正体なし。野菜も茎と皮だけと溶けにくいものしか残っていません。水分もご覧の通り。

10時間煮込みました。ここで一回火を止めだし汁を漉し取ります。

漉し取るというと簡単に聞こえてしまいますが、かなりのゼラチンが出ていますから漉し取るのも大変です。それとこのフォンは栄養満点ですので雑菌がつくと繁殖します。味見に使ったスプーンをそのままスープに入れるとか、よく洗浄していない器具を使ったり雑菌付きの鍋に入れるとかするとあっというまに台無しになるので、ここから先洗浄・殺菌を徹底し常温放置もさけましょう。

濾し取りました。あまり綺麗に撮れていませんが、何しろゼラチン質ですので濾し取るのも大変な作業で疲れています。ご容赦を。

ところで、この濾し取り方で辻調とル・コルドン・ブルーで考え方が大きく違います。辻調は漉し取った後の素材をさらに押しこんで水分を出してはいけない、と書いてありますがル・コルドン・ブルーは真逆で「ギュ・キュと押しこんで最後までだしを取る」と書いてあります。小さいようで大きな違いです。

思いますにこれ、プロでも意見が分かれると思います。
辻調はプロの卵を育てていますから高級店でも対応出来る上品な方法を教えていると思います。
対してル・コルドン・ブルーはプロが素人に教えている教本ですから、家庭料理の一環として雑味も含めてだしを取れと言っているのかも知れません(プロが通うパリ校ではどう教えているのでしょうか?)。

ともあれ出来ました。完成です。

ちょっと冷めただけでゼラチンが固まっていますね。いい傾向です。

はい完成です、深夜になりましたので寝ましょうといいたいところですがもう少し頑張ります。殺菌が必要ですので、一度強火で一気に沸騰させましょう(とろとろ熱すると雑菌の繁殖にちょうど良い時間が長くなってしまいます)。

沸騰させてフォンは氷水を使って手早く急冷します。これは一気に沸騰させるのと同じ理由です。冷えたら必ず冷蔵庫に格納です!

実はまだ完成していないのだ!

2日目です。フォン・ド・ヴォーは完成と書きましたが実はちょっと薄いんです。最終的にビーフシチューになりますし。ですので少々煮詰めます。煮詰めつつ、すね肉を下ゆでします。

ちなにみ冷蔵庫で一晩置いたフォン・ド・ヴォーはこんな感じ。固形物です。スプーンですくい取っていますが、もちろんスプーンは殺菌済みです!

使うすね肉はこちら。1キロ。米沢牛です。

「米沢牛専門店さかの」さんのすね肉ですが、こちらのすね肉はスジ付きのブロックです。欲しいのはこれなんで、いつもここで買っています。

適度にスジを外したあと、焼き色をつけ、

フォン・ド・ヴォーに入れて下ゆですること2時間。ゆであがりました。冷蔵庫で冷ましてから小さく切り、後ほど完成したドミグラスソースに投入します。

ドミグラスソースを作る

フォン・ド・ヴォーともいよいよお別れ。ドミグラスソース作りに入ります。
小麦粉とバターを焦がさぬようゆっくり火を通して香ばしく仕上げ、

フォン・ド・ヴォーに投入。さらにマデラ酒を加え、もはや後戻りは不能!

ドミグラスソースとなっていきます。

途中ドミグラスソースっぽい香りになっていきます。そこで塩を加え味付け。味を調えつつ煮込むこと計2時間。

ほぼ完成だ!すね肉を投入してさらに30分ほど煮込み、

完成しました。仕上がり2リットルほど。
最初あれだけの量を用意して、出来たのはこれだけ。

なんともぜいたくな料理ですね。

余ったトマトをコンフィにして付け合わせ。もう一つはポムアリュメット、フライドポテトですがビーフシチューとよく合います。

丸2日で完成。

自分でいうのもなんですが、市販品と比べものにならないくらいのおいしさですよ。

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